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沖縄空手|少林寺流斯道の舘

身体能力の向上をめざして

器具鍛練の功罪

少林寺流空手道 親川仁志

競技力の向上を目指して指導にあたる専門家は、
トレーニングの内容によって身体の硬化を生み、スピード、持久性、バランスのロス、怪我の多発など、本来あってはならない事例を出現させていると警告しています。
空手の分野でも、様々な鍛練法が技術力の向上として広く活用されており、確かに正しい鍛練法は、柔抹性を増し、バランスを整え、パワーをアップし、身体能力を向上させていると思われますし、また、身体動作、身体組織、持久能力の改善など有意な変化を求めることかできると考えられます。

IMG_0005.jpg鍛練の目的は、筋力のアップ、パワーアップ、スピードアップ、筋肉量の獲得にあります。
身体動作のエンジンは筋肉でありますから、筋肉強化そのものには大きな意義があります。
今、日々鍛練に励む空手マンから、
「腕が伸びず思いきり突けない」、「蹴りで足が上がらずスピードに欠ける」、
「呼吸が乱れバランスがとれない(疲れやすい)」、「肘・膝を故障した」等々の声が多々あり、
この原因については素人ながら深い関心をもっている次第であります。
この真相は専門家の解明に委ねるものでありますが、
自己の体験から、原因は過度のトレーニングで筋肉群が硬化し、
①肩甲骨周辺に力の生まれない身体状況やフォームになってしまった。
②重心移動を含めた下半身がうまく使えなかった。
すなわち身体能力の低下にあると考えられます。
その原因が曖昧なまま、筋力、パワー、スピードの不定として腕や脚のトレーニングを行なうと、
更に身体能力は低下し、肩・腰などの故障を招くことでしょう。
スピードや力の不足と見える動作の原因を、
筋肉・パワーの不足と短絡的に帰結させてはいけないと考えます。
このように身体トレーニング法と身体能力の向上の関わりの観点から、
空手道の鍛練器具の使用も忌避されなければならないトレーニング形態が少ないように思われます。


三戦カーミ
基本鍛練として多用される器具であります。確かに筋力アップや腰・肩の形成に有効であります。しかし、各関節角度において全力に近い筋力を発揮し動作終盤でも力を込めつづけるというトレーニングを行なうと上腕・前腕・膝・下腿等が肥大硬化を起こし、動きをロスさせます。いわゆる等張運動は動作改善には役に立つことは少なく、身体硬化等むしろ有害な面が指摘されます。

金剛圏
1935年頃、初めて他の格闘技より導入された金属の鍛練器具でかなりの重量があります。挙上動作における呼吸は、連動生理学的に身体機能の向上に有益であると思われる。前傾姿勢で肩に固執した押し上げは、脊柱起立筋や広背筋が支持連動に参加し、体幹・大殿筋・ハムストリングスを上手く鍛えることができます。しかし、手首を反動させての床面での回転は握力、リストの強化は期待できますが、弾みや反動を伴うため、腱の損傷に細心の注意を払うべきであります。

担(タン)
握りの支柱が太く、かなり重量があるので、指屈筋を刺激し、握力の強化につながる。しかし、上肢水平位置で上腕と前腕間を転がしての支持は屈筋群を損傷させるおそれがあり、腕部の鍛練法としてはすすめられません。

石錠(イシサーシ)
脚部の鍛練異として活用されていますが、重量を考えるべきでしょう。脚部は人体で最大の筋肉群であるので高負荷のトレーニングが必要であります。

石鎚(チイーシ)
前腕の強化に有効であります。息を吐きながら前方に支持し、体幹の外側・後方へ移動し、スタート位置に戻る。肘を伸ばして固定する動作を多用するので左右に揺れると肘関節の「不用な刺激」を与え、損傷する原因となります。適度な重量を選択すべきであります。

巻藁
拳の強化に必須であります。突き手動作、引き手動作、ともに拳を意識します。スピンを加えた形での動作は、広背筋発達に効果をもたらします。引手位置から巻わらの間隔により肘関節と肩関節、大胸筋へ過重な負荷をかけることがあります。
器具鍛練は正しい身体の動かし方を鍛えることであります。
筋肉の発達を基髄に、根幹筋を中心とした筋力、スピード、持久性を鍛えることであります。
正格に実践される鍛練法は関節可動域の拡大等、身体能力を著しく向上させます。
今後、空手道の分野における連動生理学的な面からの探究が求められます。
以上、伝統的な鍛練器具の功罪を素人ながら書き記しましたが、
斯道の諸氏のご意見・ご批判もあれば有り難く思います。
空手の道に志して29年余を数えるが、先輩諸氏の教示のもとで初心に戻り、研鎌したい。

最後に、今、大リーグで活躍し、日本の野球ファンを魅了させた野茂英雄投手の単身渡米の心意気に感動することは勿論でありますが、彼がメジャー・リーガーとともに生活して学んだという、彼の印象深い言葉を紹介します。

「彼らは超人的なヒーローではなくて、誰よりも努力を重ねて生きる人間である」

書屋武朝徳先生の教え
拳を突くとは、手ばかり突くに
あらずして、気足共に突くべし。
拳を引くとは、手ばかり引くに
あらずして、気足共に引くべし。
気拳体一致

1996年(平成8年)11月


2008年6月13日 23:23 upload

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